テレビ通販の激戦区、「Health&Beauty」

 
健康イメージ
 

僕がこのコラムで書くことの多くは決してエビデンスデータをベースにしたものではなく、長年インフォマーシャルの構成作家としていう関わっている中で体感していることに基づいています。そんな中、新たなインフォマーシャル制作が始まる度に思うことは、その商品のジャンルとして圧倒的に「健康食品」「化粧品」が多いということ。これが2トップなのではないでしょうか。言い換えれば、消費者のニーズとして「health&beauty」の志向が高いということですね。そしてさらに言えば、そこは同じようなテーマを掲げる商品の激戦区だということ。つまり、商品ごとの違いが伝わりにくい多くの情報が視聴者に届けられるその市場で、いかにエッジの効いたコンテンツに仕上げて目に留めてもらうかがカギとなるということです。

 

では、どうやってエッジをつけるか。まずは何といっても、このインフォマーシャルという番組を見てもらうための工夫。それが前回書いた【視聴滞留】の“色”です。さらに、自然な流れで商品情報ブロックへと展開され、【視聴滞留】を伏線として商品の必要性へと繋げていく。そこが【必要性の訴求】の“色”。そして【CTA】へと展開され電話が鳴るのを待つ……。

 

「視聴滞留」の色、「必要性の訴求」の色、「CTA」の色。これらの色を基本にして組み合わせることで、その商品に合った無限の色と独自の絵が生まれると思うのです。

 

つまり、【CTA】に辿り着くまでには、【視聴滞留】と【必要性の訴求】が構成要素として存在し、消費者にとって代り映えしない商品であっても、【視聴滞留】に魅力があればそれが効率的に【必要性の訴求】に繋がり、最終的にオンリーワンの商品として喚起される、と思うのです。

 

 【視聴滞留】と【必要性の訴求】の“汽水域”で見えてくるもの

 

【必要性の訴求】のブロックの主役は、当然ながら商品そのものとなります。つまりは商品情報。この、商品の力、“商品力”のポテンシャルを上げるために、【視聴滞留】のブロックで事前工作をしておくのです。ここで肝心なのは、視聴者にわざとらしさを感じさせないこと。あくまでも自然に、気づかれないように、(言葉は悪いが)洗脳するように、商品力を伝えることが求められます。そのためにも、【視聴滞留】と【必要性の訴求】が入り混じる両者の汽水域とも言えるゾーンが最も重要で、たとえば前回書いた『メディプラスゲル』の場合は、ここで「商品ロジックとエモーショナル」が見事に融合されて描かれ商品の魅力を最大限に伝えているのです。

 
挿入図(final)
※「CTA」=Call to Action

 

つまり、どんなに激戦区の商品であっても、商品の必要性につながる【視聴滞留】という布石を打っておき、それがスッと商品力へと乗り替わるように、この汽水域を構成の重要な視点として考える。これによって、番組全体の印象はガラリと変わると思うのです。

 

 【視聴滞留】と【必要性の訴求】を繋げるキーワード

 
なるほど!
 

さて、実際にインフォマーシャルを制作するとなると、それは構成作家だけではなく担当営業、制作会社のプロデューサー、ディレクター、ADなど、多くの人間が関わります。そうした大人数のプロジェクトの中で、【視聴滞留】と【必要性の訴求】の汽水域などという、いかにも抽象的なこの考え方をどうやってみんなで共有すればいいのか。

 

あるのです。とても簡単なキーワードがあるのです。それは、【リアリティー】

 

これは、テレビ通販の中でも継続的に高いレスポンスを獲得しているキューサイさんの素材から導き出したキーワードでした。取り扱っている商品はどれも熟成した市場にあるもので、構成上のエッジを効かせようにもなかなか商品力のポテンシャルアップに結びつけるのが難しい商品です。なのに、どうして結果を出しているのか?それを実現している大いなるキーワードが【リアリティー】だったのです。

 

たとえば愛用者を訪ねる時は、(たぶん)その人の自宅を撮影場所として選定している。撮影時はカメラ2台を配して、撮影クルーがわざと映り込むようにしてそのお宅を訪ねていく。インタビューするのも(たぶん)本当の自宅だから、生活感に包み込まれている。インタビューでの受け答えも、(たぶん)ディレクターとのコミュニケーションが取れているからだろう、壁がなく自然な形で、とても素直な真実味に溢れたコメントが引き出されている。あくまでも推測ではありますが、随所に【リアリティー】が追求されているのです。

 

 素材制作の指標“リアリティーの追求”

 

【リアリティー】を追求するというのは、キャスティングや撮影の仕込みにおいて、時間と費用と労力を要するものであり、制作陣にしてみれば無意識に避けたがるものかもしれません。しかし、構成会議の段階から「可能な限りリアリティーを追求する」という共通意識をみんなが持っていることで、精度の高い台本に仕上がると思うのです。視聴者は「猜疑の目」で広告媒体を吟味していると考えるべきで、その「猜疑の目」に打ち克つ武器は、やっぱり【リアリティー】なんだよなぁ~ということを、キューサイさんの素材は改めて教えてくれたのです。(それらキューサイさんの素材は他にもいろいろと教えてくれたのですが、それはまた次の機会に)

 

【視聴滞留】と【必要性の訴求】の汽水域。このゾーンでうごめく、視聴者の心を揺さぶるキーワード【リアリティー】。常に【リアリティー】を追求していくことで、それが構成上大きな役割を担い、全体の印象を整える。そして、多くの人間がたずさわるインフォマ―シャル制作において、この「リアリティー追求」を共通認識することがとても重要だと思うのです。

 

インフォマーシャル商品の2トップ、「健康食品」と「化粧品」。手強い競合がひしめくこの市場においても、構成の工夫次第で視聴者に届けることはできる。しかし、もっと大胆な手法で、新しいインフォマーシャルのスタイルが創れないか。そして、未開拓の市場が創れないか。次回は全く個人的な、夢想に近い、一作家が思い描く【次のインフォマーシャル】、そんなことについて書き連ねたいと思います。

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