インフォマーシャルにおける「データ」

 
データ
 

僕は学識あるマーケターでもなく、著名なプランナーでもなく、ロジカルなコンサルタントでもない、一介の構成作家です。僕のキャリアで突出しているのは、20年以上にわたってテレビ通販の台本を書き続けてきたということです。

 

以前、ある営業担当者に、「定量データと定性データをきちんと把握して下さい」と言われたことがあります。当時、恥ずかしながら僕はその言葉自体も知らなかった。でも、それをきっかけに知ることが出来た。インフォマーシャルを創る上で、この「定量データ」と「定性データ」は大切な羅針盤になるわけで、これがあると無いでは大きな違いが出てきます。しかし、「定量データ」も「定性データ」も、この時点ではまだ「データ」にしか過ぎません。これを活用して視聴者が如何に“感じる”ものが創れるか、これがクリエイターの仕事になるのだと思います。

 

僕の仕事は台本を書くこと。もちろんそれは、僕一人で書いています。書く作業に入るまでには数回の会議を必要とします。その会議の議論の材料になるのが、商品に関する情報や市場データ。それらを利用しながら、商品の特長は何なのか、市場における差別化ポイントは何なのか、視聴者の共感ポイントはどこなのか……等を探ります。

 

そんなあらゆる情報をフルイに掛ける際に利用するのが、トライステージのメソッドの一つである「売れるインフォマーシャルの八角形」。特に構成に関わる要素を鑑みながら、情報の取捨選択を担当営業を含めた制作チーム全員で行っていくのです。

 

しかし、それだけではまだ台本は書けません。なぜならそれは、未だ「データに基づく情報」だから。そこで、それら断片的パズルのピースとも言える情報を、どんな完成形にするかの認識をチーム全体で共有するため、ちょっと長めのキャッチコピーを創ります。

 

あらゆる情報、メッセージ、ターゲットインサイト、番組テーマ等が凝縮されたキャッチコピー。それが最終的に視聴者に伝えたいこと。これさえ出来れば制作チームの個々が道に迷うことはありません。そう、インフォマーシャルの尺の違いはあったとしても、本当に視聴者に伝えたいのはこの一言。それを全員でああだこうだ議論し、その言葉が生まれたところで僕が台本という形でまとめていくのです。

 

 インフォマーシャルだからこそ、「面白さ」を追求する

 
テレビとリモコン

 

僕は例えば29分の台本を書くのに大体10時間ほど費やします。そしてもうひとつ、送るのは「締め切りギリギリ」です。制作関係者から見ればハラハラするほど遅いと言えるでしょう。
ですが、この10時間は本当に濃密な10時間です。その書いている時間、僕はみんなで固めたキャッチコピーを骨子にして、そこに肉付けするように台本をまとめていきます。簡単に言えば最終的に言いたいのはそのキャッチコピーにあるのだから、そこに向かって道筋を創っていけばいいのです。

 

しかし、ここで時々作家としての欲が出る。それは、構成の全貌が見えてきたところで、会議には一切出ていなかった「寄り道」をしたくなってしまうのです。ある意味、それが作家の醍醐味。うまくいけば美味しいところ。もっと言うとその「寄り道」が必要なんじゃないかと思うのです。

 

先に、「台本は僕一人で書いています」と言いました。しかしそれは、初期の台本に関してです。第1稿を仕上げて、それをタタキにしてみんなでブレストし、更に修正して稿を重ねていく。台本はスケジュールが許す限り、どんどん変わっていきます。そう、最終的に台本を書くのは作家一人ではありません。

 

そして、台本は撮影段階に入ったタイミングで僕の手から離れます。そこで、現実的な撮影要素、撮影後の映像素材(「撮れ高」と呼んでいます)、尺調整などを踏まえて台本はどんどん変わります。その作業は主にディレクターが行いますが、決して変えてはいけないのが、みんなで決めたキャッチコピー。

 

逆に台本には明確に記されていなかった副産物も生まれます。それはやっぱり、「あそび」。
間違いなくそれはディレクターの腕ではあるけれど、そこに導いたのは僕の「あそび」があったからだと信じています。

 

要するに、僕の信念として台本は「面白い!」と思わせることを念頭に置きながら書くことが大切だと思うのです。それは、あらゆる「データ」とは一線を画したところにあるような気がします。

 

2年程前、ある営業担当者から「これみて下さい」と言われた29分のインフォマーシャルがあります。その商品は、オールインワンゲル。僕はその作品を食い入るように見ました。何て面白い番組なんだ、と思いました。随所でいろんなことを感じさせてくれる、そんなインフォマーシャルでした。

 

そこで次回は、このインフォマーシャルをベースに一作家が思う構成上のポイントについて紐解いてみたいと思います。

 

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今回から始まった新コーナー、いかがでしたでしょうか。

 

次回よりいよいよ気になるインフォマーシャルをテーマに取り上げてまいります。
ぜひご期待ください。

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