7月17日、日本企業のASEAN(東南アジア)市場進出をテーマとしたセミナー「ASEAN Marketing Strategy 2018  6億人消費市場の魅力とチャンス」 を、弊社主催で開催いたしました。

 

総人口6億人を有する東南アジアの経済成長は著しく、過去10年間でGDPの規模も約2倍へと拡大。シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピンといった5大経済国だけではなく、ベトナムやミャンマー等中小経済国の成長も目立ってきている注目の巨大市場において、日本企業はどうすれば存在を示し事業成長していくことができるのか。
今回のセミナーでは、タイ、インドネシア、シンガポールにおいて活躍中のビジネスリーダーが登壇し、日本企業の過去の成功と失敗を振り返りながら、これからのマーケットの攻め方について考察がなされました。当日は予定の100名を超える多くのお客様が来場され、ASEAN市場に対する関心の高さが伺えました。

 

本セミナーはクローズドセミナーであり、会場限定の情報が中心でしたが、登壇者各位のご理解を得て内容の一部と、盛況となったパネルディスカッションについてレポートいたします。

 

激変するASEANの事業環境 
 ASEAN市場は難しいが、非常に魅力的で面白い市場

 

特別講演1人目は、株式会社ローランド・ベルガー パートナー諏訪雄栄氏。「激変するASEANの事業環境」と題し、ASEAN市場概況を最新のトピックスをまじえて紹介いただきました。

 

 

 

トピックス:

  • ASEAN市場は各国地域によって異なる顔を持つ、細分化された市場
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  • 「新興国=ローテク」は間違い。PC時代を経験せず、モバイルが一気に普及したことにより急激にデジタル化。デジタルと親和性の高い領域は日本よりも進んでおり、むしろASEANは世界最先端
    事例)インドネシアでは銀行口座の所有者が全人口の4割しかいなかったため、モバイル決済が急速に浸透。ECの発展も貢献し、企業は消費者を取り込めるようになった
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  • 利益度外視で市場総取りを狙うプレイヤーが台頭。従来の市場シェア獲得戦略に異変
    事例)ASEANライドシェア市場、グラブと競合関係にあった大手Uberが撤退
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    そして大きく変遷するASEAN市場で日本企業が戦っていくための3つの要諦として挙げられたのが
    1.最先端技術 2.経営合理化 3.スピード

     

    「難しい市場であるが、新しいモノが喜ばれ、さらに消費者の抵抗意識も少ないことから、先端分野は日本ではなくてASEANで実験するという発想も有効」との提案も大変印象的でした。

     

    株式会社ローランド・ベルガー
    URL:https://rolandberger.tokyo/

     

    花王のASEAN市場開拓戦略 
     ~これまでの軌跡から戦略と実態、成功と失敗を紐解く~

     

    特別講演2人目は、花王株式会社コンシューマープロダクツ国際事業統括部門 アセアンリージョン統括 兼 花王タイランド社長瀧博明氏。花王のASEAN市場での成功と失敗、現状の課題とこれからの展望について講演いただきました。

     

     

    現在、花王の売上高における海外比率は35%。海外への事業展開は1964年に開始されましたが、アジア圏の一体運営を開始した2006年から10年間で大きく伸長しているそうです。特にグローバル一体運営が始まった2011年からは伸び率が上がり、この理由として、下記の取組みが紹介されました。

  • グローバルで通用する強いブランドの選択
  • グローバル販売網、インフラの構築
  • スピード重視による権限移譲
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    またASEAN市場の攻略ポイントとして、国、都市(首都)ごとに、まったくライフスタイルが異なり、多くのスモールマスが出現している現状から、SPT(Segment Positioning Target)が重要であることを、苦戦した商品と好調な商品の事例を挙げて解説していただきました。

     

    Segment Positioning Target
    (1)どの分野(市場)で戦うのか
    (2)どんな商品を開発もしくは持ってくるか?
    (3)どんな消費者をターゲットにするのか?どのようにアプローチするか?
    (4)どのチャネルを重点に攻めるか?どのカスタマーと取り組むか?
    (5)そして、成功図(利益ある成長)が描けるか?
    (瀧氏資料より抜粋)

     


     

    花王株式会社
    URL:https://www.kao.com/jp/

     

    シンガポールから始めるASEAN市場進出戦略

     

    登壇3人目はJML Singapore Pte. Ltd.の緒方健介。現在シンガボールに常駐している緒方から、ASEAN進出の起点にシンガポールを提案する理由として、下記3点が挙げられました。

     

  • 1.シンガポールは東南アジアの「ショーケース」
  • 2.日本商品が売れる環境が整いつつあり、ポテンシャルが高い
  • 3.テストマーケティングにも最適な環境
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    またここでも国別ではなく、都市単位でのマーケティングを考える重要性があげられました。

     

    主な都市別人口

     

    市場選択の際、より人口が多い国に目が行くのは当然ですが、しかし最初の一歩を踏み出す先は国を代表する都市です。都市として並べると、シンガポールの市場規模がそれほど見劣りしないことがわかりますし、GDPで比較すると、さらにポテンシャルの高さがわかります。

     

    主な都市別GDP(推計)

    (株)トライステージ 調査に基づく推計

     

    また、事業の成功確率を上げる方法として、「最初にEコマースを選ばない」理由と、クロスメディア施策を紹介しました。とくに世界中で進むデジタルシフトを背景に、初期投資の軽さもありEコマースでの進出を検討する企業が多いことに対し、「そもそも、知らないものを検索して買うことがありますか?」という緒方の問いかけに、会場の多くの方がうなづかれる場面がありました。

     

    参考URL:東南アジア進出の起点として、貴社がシンガポールを選ぶべき理由
    http://www.tri-stage.jp/interview/01/

     

    【特別ディスカッション】ASEAN Marketing 
     ~多種多様なマーケットで如何にして戦うか~

     

    はじめに、パネルディスカッションから登壇されたカゴメ株式会社国際事業本部 グローバルコンシューマー事業部 事業部長山本一成氏より、事例としてタイで初めてトマトジュースの需要を創出した経緯とそれに続く市場動向について、そしてこの経験を礎に構築した現在の事業戦略について講演いただきました。

     



     

    カゴメ株式会社
    URL:http://www.kagome.co.jp/

     

    その後ひき続き、山本氏、瀧氏、緒方の3名でディスカッションを行いました。

    「ASEANにおけるマーケティングの肝」について

    瀧氏「どのターゲットに対してビジネスを行うのか、そのターゲットの求めるものに見合う商品をきちんと提供できるか、戦う場所をどこにするかということ。そしてセグメントに集中していくこと。まず自分たちの狙っているところで成功事例を積み重ねていくことが大切だと思います」

     

    緒方「ターゲットを明確にするのが大切。そして売り方、特にチャネル(メディア)との組み合わせをどうするか。TVを見てネット注文をする人はまだ非常に多い。いかにしてデジタルとリアルを組み合わせていくか、そしてその組み合わせ比率を普及率の状況によってうまく変えていくことがこれからのキーになります」

     

    山本氏「リアルはどこを攻めるのか、どういうシナリオを描くのか、どういう形でデジタルとリアルをつなげるのか、その仕組が非常に重要だなと思います」

     

    ASEAN進出をシンガポールからスタートした場合、その次に選ぶ国はどう考えればいいか?

    緒方「人口構成と言語が非常に大事なので、シンガポールの中華系、マレー系など、どこの層に反響があったかという販売実績により、次に展開する国は変わってきます。だからこそシンガポールでのテストマーケティングは大切です。また都市としてシンガポールと香港は似ており、アジアの玄関口は香港、東南アジアの玄関はシンガポールと考えることもできると思います」

     

    山本氏「同様に香港と、シンガポールに重点を置いています。またシンガポール展開していく中で、ハラル対応が必要な場面があり、ハラル認証をとって強みにしていくことで、ハラルに厳しいマレーシアへ展開しやすくなります。このように1つのファンクションを持つことで宗教や民族に近しいエリアに対し、水平展開がしやすくなります

     

    参考:主な都市別人口構成表

     

    海外進出に際するパートナーの選定や判定基準は?
    「パートナー選びの選定や判断基準」は、事前アンケートで多くの方が聞いてみたいこととして挙げていました。
     

    山本氏「その国で配荷力を持っているところをパートナーに選んだとしても、商品を売っていただけるかはわからない。どの店舗に置くかなどは、パートナーの戦略次第になってしまう。それよりも商品のファンをいかに増やすかということの大切さを理解してくれ、目先の売り上げ、利益ではなく、中長期的にわれわれの考えていることを理解してくれるか。今はそういうことを主にして選定しています」

     

    瀧氏「経験から実感していることですが、私たちの商品をよくわかってくれていること、そして私たちと一緒に仕事をしたいと思ってくれているところとはうまくいくと思っています。反対にビジネスライクなところとは、すべてではないにしてもパートナーとしてうまくいかないことが多いように思います」

     

    最後に自身の講演内でパートナー選定の3条件として、
     1.日本ブランドへの理解
     2.東南アジア全域が対象
     3.海外でのビジネス経験、ノウハウを持つ人材

    をあげていた緒方より
    自社商品ターゲットであるユーザーの志向をいかに知っているか?対象ユーザーがその会社でマーケティング活動に関わっていることが大切だ」と補足がありました。

     

    最後に

     

    最後に、登壇者より参加者の方に向けてのメッセージを紹介します。

    瀧氏「ASEAN市場は中間層がこれから大きな厚みになっていく、非常に魅力ある市場として今後その成長は続いていくと思います。その中で適切な市場、自分たちがどこでビジネスをするのか、ということを明確にすることが大事だと思います。これは点のアプローチになりますが、ただ点で終わるのではなく、つながって面になっていきます。講演にあったように、シンガポールで売れたものが他の国でも受け入れられていくということは起こり得る。またASEANのどこの国でも対日感情は良いので、日本の企業はやり方を間違えなければ、また規模の大小も問わなければ、1から成功体験をつくっていけるのではないかと思います」

     

    山本氏「ASEANと言っても広いので、まずは1つの成功事例を小さくてもいいからつくる。私たちもシンガポールを6区分のエリアに分けて、まず1区分で成功したら横に広げていきます。そして、それを他の国へ広げていく方向に持って行きたいと思っています。ASEANは話にあったように「都市」という見方ができるので、1つの都市で成功すれば他の都市に持っていける方法はたくさんあると思います。ただこの1つを成功するのには、すごく労力がかかることで、その労力を厭わないことだと思います。これができるようになったらそれが積み重なってベストプラクティスとして横に広がり、最終的にはASEANの中に広げることができると思います。スピードがすごく求められるところですが、小さな成功をまずはつくり、それをスピードに乗せて拡大していくというのがASEAN攻略の鍵になるのではと思っています」

     

    緒方「まず認知度の低いものは売れないです。どうやって認知度を上げるのかといえば、そこは地道にリアルとデジタルのマーケティングの組み合わせでやっていく。実際に自分の商品を競合商品と比較して、何が特徴なのか、なぜ選ぶメリットがあるのかをしっかり消費者に説明できるようにし、対象者に合った説明手段(チャネル)を選ぶ。まずは認知度を上げ、その後に実際に手に取って確認してもらい、そしてネットでリピートさせるというチャネルの組み合わせをどう実現するか。こういうことを考えて、良きパートナーを持って進出すれば、必ず日本の製品は売れると思います」

     

    以上、ASEAN Marketing Strategy 2018のレポートをお届けしました。

     

    開催日時 2018年 7月 17日(火) 13:15~16:30
    会場   野村コンファレンスプラザ日本橋
    主催
    株式会社ビジネス・フォーラム事務局 
    JML Singapore Pte. Ltd.
    株式会社トライステージ

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