こんにちは。トライマーケット編集部の樋口です。

 

去る11月15日、「マーケターの決断が、企業を進化させる」をテーマとして宣伝会議サミット2017が開催されました。

 

多くのマーケターが注目する本イベントにて、トライステージの取締役 社長執行役員の妹尾 勲が、「顧客と直接つながり関係を育てる デジタル時代のダイレクトマーケティング」と題したパネルディスカッションに登壇しました。

 

本セッションは、近年のダイレクトマーケティングが重要視されている背景要因を議論するとともに、その可能性や問題点・課題などについて言及することを趣旨としており、パネラーには弊社の妹尾に加え、株式会社インテグレート 代表取締役CEOの藤田康人氏とフュージョン株式会社 代表取締役社長の佐々木卓也氏、また、ファシリテーターには株式会社エンゲージング・ファーム松浦信裕氏を迎えて開催されました。

 

本記事では、多くの方にご参加いただいた本セッションをレポートします。

 

すべてのマーケティングがダイレクトマーケティングとなる時代

宣伝会議サミット①_1000

 

90年代以降大きな伸びを見せるダイレクトマーケティング市場。一方、マスマーケティングを中心に展開してきた広告業界が、近年ダイレクトマーケティングに近づいてきています。80年代後半にマスにおける限界がささやかれ、リレーションシップマーケティングや1to1マーケティングが注目を集めて久しい今、「なぜ今あらためてダイレクトマーケティングであるのか?」について、ファシリテーターの松浦氏から弊社妹尾に切り出されました。

「弊社は通販支援という業態から、マスメディアを活用しながらもダイレクトマーケティングを追求してきました。多くの人への情報発信ツールがマスメディアのみであった時代が、インターネットの登場によって大きく変わった。いきなり『個』にフォーカスされてしまったわけです。

ダイレクトマーケティングの要諦は、顧客を集め、集めた顧客にリピートさせることで利益の源泉を産み出すこと。マスメディアは認知力を活かして人を集める場という位置づけであり、そこからさらに『個』にターゲティングして商品やサービスを届けることを想定している。つまり、ダイレクトマーケティングは「顧客主体」。もともと顧客一人ひとり、『個』にフォーカスするものです。

広告業界も、以前から顧客につながろうと考えてはいたのですが、発想はプロダクトアウトのままで顧客主体には転換しなかった。それが最近、消費者につながって背中を押しながら購買活動につなげていこうという、『個』にフォーカスするビジネスをしようとしているのです。マス発信から消費者との直接対峙へ、「アクティベーション」と言い換えながら、ダイレクトマーケティングに寄ってきています

デジタルデータの収集が容易になった今、顧客の「『私』に何をしてくれるのか」という期待を紐解く「ダイレクトマーケティング」に注目が集まっているわけです。大げさに言えば、すべてのマーケティングがダイレクトマーケティングに近づいてきたと言えるでしょう」

また、フュージョンの佐々木氏はダイレクトマーケティングの普及にはふたつの要因があると言います。

「ひとつは経営者のデータやマーケティングに対する意識が高まったこと、ふたつめはダイレクトマーケティングに必要不可欠なテストマーケティングを行う環境ができたことです。

90年代後半から2000年代にかけて到来したCRMブームでは、データの蓄積と1to1コミュニケーションの重要性が叫ばれました。しかし実際は、データ自体の収集に苦戦したり、集めたもののデータを活用しきれなかったり、何よりも経営者の意識や体制がついていけなかったという状況がありました。

この数年Weblog、SNS、購買動向等データの種類が増え、膨大なデータを収集することができる。それを分析するテクノロジーや手法・人材が揃って、経営者のデータとテクノロジーを組み合わせた意思決定が可能な土壌ができた。これには、スマートフォンの登場による顧客接点の増加も大きな影響を与えています。

こうした背景により、小さいPDCAを早いサイクルで回すテストマーケティングを行える環境ができました。ダイレクトマーケティングにおけるテストの重要性は数十年前から言われていますが、この点でも企業の意識がダイレクトマーケティングに近づいてきています」

マーケティングデータ

 

続いてのテーマとして、デジタルデータやその分析結果が重要視される一方で、それに傾倒しすぎることへの落とし穴についても意見が交わされました。

「通販の世界での大きなターゲット層である中高年以上の方々の主要メディアはテレビ=オフラインの最大メディアです。しかし、10年ほど前はフリーダイヤルで購買する人の100%が固定電話を利用していたのに対し、最近では8割が携帯電話を利用しています。また、電話での購買活動は減り、ネット窓口での購入が増えています。効果分析を行うデータを集めるのに、デジタルとの相性はいい。しかし、ここで重要なのは、顧客は自分が利用しやすい方法を選んでいるだけで、「デジタル化」という概念がそこに介在するわけではないのです。つまり、顧客オリエンテッドで考えると、『オンライン』『オフライン』という考え方はない。プランニングの際には、デジタル施策に偏りすぎない考慮が必要です。」(トライステージ 妹尾)

さらにフュージョンの佐々木氏は、マーケティングを手掛ける企業のデジタルデータのみを重視する姿勢にも警鐘を鳴らします。

「たしかにデータから分かることはとても多いです。しかし、たとえばリアル店舗を持つクライアントにしてみれば、実はデータだけがすべてではないのです。ウォルマートの経営者は、「ECとリアル店舗を区別せず、どう融合させてひとりの顧客を満足させるか」ということを考えています。つまり、データの背景にある、たとえば接客などのエモーショナルな部分を含めて分析する『目』が必要なのです。データが可視化されることと、理解されることは異なるのです。」

「アクチュアル(結果)」の対義語は「ポテンシャル」。ダイレクトマーケティングでは、アクチュアルの背景に隠された「カスタマー・ジャーニー」を読み取ることが重要と言えるでしょう。」

ダイレクトマーケティングをさらにドライブする「顧客視点の先鋭化」

 
顧客視点
3つ目のテーマ「顧客視点の先鋭化によるダイレクトマーケティングのさらなるドライブ」では、前述のテーマで出た「データの背景を読み取る」ことを議論しました。

 

インテグレートの藤田氏は、認知から購買の裏側にある「黄金文脈」について具体的な事例を挙げながら説明しました。

「認知から購買までのハードルが高くなった現代、商品やサービスに対する“パーセプション(認識)”チェンジを起こすことが必要になっています。知っていても買わないモノは沢山あり、認知と購買はダイレクトにリンクしないという考えが前提です。具体的に言うと、ターゲット層に情報がリーチし購買に至るまでに存在する「認知→理解→興味・関心→購買・検討」のステップが途切れずに行われるよう、ストーリーに基づくアプローチを作り出さなければなりません

そのためには顧客の「インサイト=行動や態度の奥底にある、ときに本人も意識していない本音の部分」を見抜く必要があります。つまり、「購買に至るまでのカスタマー・ジャーニー=ターゲットがカスタマーとなり、ファン化するまでの軌跡」を探り出すわけです。この顧客の中に必ずある「きっかけ・決め手となった体験」が「黄金文脈」です。顧客の頭の中がどう変わっていったかというインサイトを、マーケター自身がデータを活用しファクトを紡いでストーリー化する。顧客視点を先鋭化するとは、顧客の認知から購買までのジャーニーをどれだけリアルに再現できるかなのです。

クリステンセン教授が、著書「ジョブ理論」において、顧客には解決すべきジョブがあるが、そのジョブがなんであるか顧客自身はよくわかっていないと書いています。あなたのジョブはこれですよねと顧客を共感させ、そして我々の製品・サービスはそのジョブをこんな風に解決できるのですと、トータルのシナリオをみせていくことが実はすごく大事だと思います。」

 

さらに、弊社妹尾から、通販において重要なコンテンツであるインフォマーシャルは実に黄金文脈を体現したものだと、その構成要素について説明しました。

「約30分のインフォマーシャルは心理学に基づいてロジカルに設計されていますが、このプラットフォームの構造が黄金文脈と一致することが今回わかりました。視聴者のインサイトの自覚→課題の自分ゴト化→購入(→継続)につながるコンテンツで構成されており、購入者のカスタマー・ジャーニーを探索して修正を重ねていけば、リーチから購買、うまくいけば継続購入まで一気につなげることができるのです。インフォマーシャルの醍醐味とも言えるでしょう。獲得した後のCRMをどう構築していくかというヒントも入っています。」

 

また、フュージョンの佐々木氏は、リーチから購買に至る過程の中で、最終的にターゲットにもたらされる「メリット」を理解させるツールとして、あらためて「紙=DM(ダイレクトメール)」が注目されている現状を話しました。

 

最後にインテグレートの藤田氏は、データはあくまでも結果であり、仮説やシナリオを重ねることで初めてきちんと分析できる、と話しました。

重要なのは再現性や拡張性。仮説とシナリオがあれば、なぜうまくいったか、あるいはなぜうまくいかなかったかがわかる。だから、再現可能であり、拡張性が出てくる。これだけ情報があふれている世の中で、われわれは新しい需要を作っていかなければなりません。それにはインサイトの理解が非常に重要になります。それなくしての取り組みでは、顕在化している需要の最適化までは可能でしょうが、目先の数字を刈り取った後、「気づいたら誰もいなくなっていた」という状況を生み出すでしょうね」

 

 

以上、宣伝会議サミット2017にて開催されたパネルディスカッションレポートでした。

 

マーケティング領域におけるここ30年の変化。その変化は、デバイスの多様化やさまざまなテクノロジーの進化により多くの取り組みが可能になったことだけではなく、消費者側が多彩な価値観をもち、受け取る情報を取捨選択するようになってきたことも大きく影響しています。

 

いかに“その人”の価値観にリンクさせるか。データの“行間“を読み、価値観に沿うストーリーを創りだすことがマーケターに求められる最大のスキルと言えるでしょう。

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