こんにちは。トライマーケット編集部の樋口です。

 

通販における販売促進で大きな役割を担うCRM。顧客との大切なコミュニケーション手段のひとつですが、多くの企業はその施策に試行錯誤しており、きちんと成果を上げるためのコミュニケーションについてのご相談は少なくありません。

 

トライステージは今年5月に、CRM分野におけるさらなるサービスの充実をはかり、総合マーケティングサービスプロバイダであるフュージョン株式会社(以下フュージョン社)と業務提携いたしました。
 

今回は、去る8月25日にフュージョン社とともに開催したCRMセミナーにてお話したCRMの現状や課題と成果を上げる施策の考え方について、メールカスタマーセンター株式会社の葉山智彦に話を聞きました。

 

 “売るため”に陥りがちな「ブランドを疲弊させる」CRM

MCC 葉山氏
株式会社トライステージ 事業開発部 CRM担当 兼
メールカスタマーセンター株式会社 執行役員 葉山智彦 氏

 

通販では新規顧客の獲得も大切ですが、一度購入していただいたお客様に継続的にご利用いただくリピート促進が最も重要です。つまり、通販におけるCRMの役割とは、このリテンションをいかに高めるかということになります。

 

では、その施策として多くみられるのはなんでしょうか。お手元に届くDMなどを見ていただいてもわかると思いますが、「初回半額」などの割引や、購入に伴うプレゼントなどをつけるケースがほとんどだと思います。

 

たしかに、消費やサービスを購入する時に値段は非常に重要です。しかし、値段が大きな購入理由になっている場合、当然のことながら値段で他商品に乗り換えられることも少なくありません。DMを出す側も値段が購入動機のひとつになっていることが分かっているため毎回オファーを提示することになり、結果的にその商品ブランドの価値を疲弊させることにつながっていきます。

 

ネガティブサイクル
(メールカスタマーセンター セミナー資料より抜粋)

 

残念ながらこれは、現在行われているCRM施策に多く見られ、顧客との長期的な関係性を築くことは難しい=リピート客を増やすという本来の役割を担えていないということになります。

 

 “売り”からの脱却が顧客の心をつかむ?!

ハートと赤い糸_1000
 

では、少し視点を変えて、「顧客が離れる理由」を考えてみましょう。
2011年にアメリカで発表された調査結果では、「自分が(その)企業に大切にされていないと感じたから」が、商品やサービスに対しての不満を抑えて、1位にランクインしています。

 

この調査結果からわかることは、「顧客とのコミュニケーションの重要性」です。商品自体の良さや値段も大切な要素のひとつですが、顧客が本当に求めるコミュニケーションはそれだけではないということです。

 

ここで、割引などのいわゆる“売り”の要素を含まないコミュニケーションが成果を上げた事例をふたつご紹介しましょう。

 

【事例1】手書き風のお礼状とその効果
これは私自身が経験したことですが、ある健康食品を購入した後に手書き風のお礼状が送られてきたことがありました。

 

お礼状2
▲実際に送られてきたお礼状

 

多くの企業が商品送付時に同梱するケースがほとんどである中、ハガキが別送されてきたのです。ハガキを受け取った時に思ったことは、「あ、ちゃんと飲まなきゃ!」ということと、代金後納にしていたので「お金を払わなきゃ!」ということでした。これは、同梱されてくる印刷物のお礼状を受け取った時には起こらない「感情」です。実は初回の商品は割引などをしているケースが多く安価に入手できるので、購入したものの使用しなかったということが多くみられる現象なのです。きちんと使用しなければ商品の良し悪しもわからずその後の継続もないわけですから、「飲まなきゃ」という気持ちを起こすDMというのは、非常に大きな役割を担っていると言えます。

 

これとは別に、以前私のセミナーで「初回購入から1か月以内に何らかのコミュニケーションが重要」という話をしたところ、あるECサイトが初回購入の17日後にDMを送るという施策を実施することになりました(この企業にとっては初のDM施策)。結果、売り上げはそれまでの2倍、リピート率は3倍に上りました。費用は数万円かかりましたが、成果からいえば抜群のROIと言えるでしょう。

 

【事例2】学習院大学が受験生に“贈った”クリスマスカード
これはフュージョン社が手がけたもので、2016年度の「全日本DM大賞」で銀賞を受賞したのでご存知の方も多いかもしれません。個人的には最近でもっともゾクッとした印象的な事例です。

 

学習院大学が、オープンキャンパスに来た学生にクリスマスカード風のDMを送りました。カードの外側にはクリスマスツリーが、カードを開くと桜の木と「桜の季節にお会いしましょう」というメッセージが入っているというものです。縦長のカードに余白を活かした一見シンプルなデザインですが、繊細なデザインが引き立つようあえて定形外サイズを選択するなど、コストをかけてクオリティにこだわったDMでした。

 

学習院DM
左:郵送先の情報が印字されても美しい封筒デザイン
中:カード表面には受験に関する情報を掲載
右:カード中面は桜の木とシンプルなメッセージのみ
 

受験生の冬と言えば、クリスマスもお正月もなく一番ピリピリしている時期です。その時期に、純粋に受験生を応援するメッセージとともに送られてきたカードは学生の間で話題となり、SNSでも拡散されました。結果、その年の同大学の受験生は過去10年間で最高値となったとのことです。

 

このふたつの事例に共通することは、DMに一切「売り」を入れてないということです。しかし、そのコミュニケーションは顧客の心に届き、大きな成果をもたらしたのです。これは、コミュニケーションを考える上での本質的なことと言えます。

 

CRMは「人と人」とのコミュニケーションである

 

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別の角度の事例としては、顧客によって送る情報量を変えて成果を上げたケースがあります。これは、受け手のステージニーズが顕在的か潜在的かによって与える情報量を変えるという、いわゆるCRMのテクニックを活かした施策のひとつです。通常「CRM施策を考える」というと、こうしたテクニック論に走りがちです。しかし、先にご紹介したふたつの事例に見られるように、コミュニケーションの本質的な部分をきちんと踏まえ、テクニックと両輪で施策全体を組み立てることが重要なのです。

 

「Response」を求めるのではなく、顧客との「Relation」をはかる。「どうやったらコストを削れるか」を考えるのではなく、「どこにコストをかけるか」を考える。「人と人」とのコミュニケーションとして考えることが心に響くCRMを実現し、成果を上げることにつながると言えるでしょう。

 

 

以上、メールカスタマーセンター株式会社の葉山に聞きました。

 

通販のCRMにおける目的は商品やサービスの購入していただくことです。しかし、多くの商品が流通する今、商品の良さはもちろんのこと、企業として・ブランドとして顧客の価値観にどれだけ近しいかは、継続的に選択していただく大きなポイントとなります。また、顧客個人がその企業とのつながりを感じ、「大切にされている」と感じられるような顧客体験を提供することも重要な要素と言えるでしょう。

 

きちんと理解した上で選択していただく。そうして選ばれたものは、その人の日常となってゆくのではないでしょうか。

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