直接的アプローチの変化

 

インフォマーシャルで扱う商品というのは、概ね【お悩み解決商品】だと思います。化粧品、健康食品、ダイエット商材、掃除機だって。つまり、【悩みと解決策】。この二者の関係性を解き明かすことが、インフォマーシャル構成ロジックの最小単位と言えると思います。

 

そして、その商品の特性やら必要性やらをわかりやすく説明するにあたって重要となるのが、【ターゲティング】です。「肌がすぐに乾いてしまう!」「階段の上り下りがツライ!」「去年スカートが入らない!」……。そんなターゲティングを映像とナレーションあるいはコメントで表現することで、商品の必要性へと展開していくのです。

 

僕自身、その【ターゲティング】の使い方が最近ちょっと変わってきました。どう変わってきたか?簡単に言うと直接的だったものが、少し遠回りをする言い回しになった。あるいは努めてそのようにするようになった。それは言い回しの変化だけでなく、ターゲティングを挿入する構成上の場所にも見られ、以前は番組冒頭にあったものが、ちょっと遅めに「つまりこういうことです」というような感じで使うようになった気がするのです。

 

 付かず離れず

 
背中合わせ_1000

そんなターゲティングの使い方の変化は、前々回から書いている【視聴滞留】の“色”を付けることの大切さと重なります。インフォマーシャルは、「テレビ通販」である前に、「テレビ番組」である。それを考えると、のっけから「肌がすぐに乾いてしまう!」と言っても興味ない人は見てくれない。あるいは「またか」と食傷気味な人もいるかもしれない。なので、その商品から派生する材料を使ってきちんと興味喚起させた上で、「つまりこういうことです」と、話を持って行く流れが必要だと思うのです。特に29分の場合、「視聴滞留を図る」ことをベースに、【付かず離れず】くらいの距離感で番組冒頭のアテンションを創る工夫が必要なのではと

 

繰り返します。極端に言えばかつてのインフォマーシャルは、番組が始まって30秒くらいでその商品のジャンルがわかりました。少なくともそのような作りでした。それは明確なターゲティングがあったから。でも最近の傾向として、そのターゲティングと商品にはある程度の距離感が生まれるようになりました。それは商品の差別化であり、コンテンツの差別化を図ることが狙いです。そして更に、その距離というのをもっと持たせたいと思うのが僕の個人的な想いです。

 

インフォマーシャルで扱う商品は、概ね【お悩み解決商品】。そして、【悩みと解決策】という構成ロジックの最小単位。これってこの先も基本的には変わらないのではないかと思います。更にターゲットの属性が概ね40代~60代の特に女性というのも、大きくは変わらないと思います。しかし、僕らが対象にしているその人たちのライフスタイル、嗜好というのは、大きく変化しています。中でもインターネットの親和性は確実に上がっており、そこで展開されている動画コンテンツに接する生活習慣から、映像(テレビ)そのものに対する心象変化は10年前の同年代の人たちとは大きく変わっていると思うのです。

 

そのようなことから類推すれば、インフォマーシャルという番組も、大きく変わるべき転換期に来ているのではないかと思うのです。平たく言えばよりクリエイティビティなターゲティングが必要なんじゃないかと。そして【よりクリエイティビティ】とは、【もっと離れてもいい】という意味だと、勝手に解釈するのです。

 

 妻の名前を呼ぶ

 

2年程前、とあるクライアントの女性の方から「こんな共感性の創り方をやってみたい」と言われた動画コンテンツがありました。内容を簡単にまとめると……。

 

ナレーションは一切なく、流れるのはピアノのBGMとテロップと出演している男女の音声だけ。その男女とは、30代の夫婦。そんな数組の夫婦の何気ない家庭の風景から始まり、その中で夫は妻のことを「ママ」と呼びます。

 

次に、<日本の女性は母親になると、いつしか名前で呼ばれなくなる><もし、彼女たちがもう一度名前で呼ばれたなら>というテロップが入り、実際に名前で呼ばれた時のリアクションがとても自然な映像風景の中で繰り出されます。名前を呼ばれた妻は一様に「えっ?」といった驚きの表情を見せます。更に照れ臭そうに笑顔を見せる。「どしたの?」と戸惑いながらも嬉しい表情。それは、視聴者にほのぼのとした安心感をイメージさせる光景です。

 

そしてストーリーは急展開。<私たちは母親が名前で呼ばれることで起こる変化を調べました>。その結果、美のホルモンとも言われるオキシトシンの量が増加するという研究結果に着地。最終的に<全ての女性には美しさという本能がある>というメッセージで終わる、そんな動画です。

 

これを配信した企業とは、ポーラ。そこには商品など出てきません。飽くまでもブランディングをテーマとした企業メッセージだけを発信しているのです。

 

 これからのインフォマーシャル

 
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この映像のプラットフォームはインターネットの動画サイトです。「商品を売る」ことを主目的としていないから、このようなブランディングを中心にしたクリエイティブが出来るのでしょう。でも、強い共感を見る人に与えます。映像の創りもクリエイティビティに富んでいます。

 

もしも、このテイストをインフォマーシャルのターゲティングとして使ったなら、とても遠回りなアプローチとなるでしょう。しかし、ターゲットは変化しているという仮説を重視するならば、【悩みと解決策】の紐付け方に、【よりクリエイティビティな発想】を加味することで、今以上の共感性が創造でき、最終的により強いコンテンツに仕上がると思うのです。

 

ブランディングを重視した動画を「ブランデッド・ムービー」あるいは「ブランデッド・エンタテインメント」と呼ぶようです。最近知りました。そして、「次のインフォマーシャル」として僕が強く思うのは、この「ブランデッド」を意識したインフォマーシャル。共感性の創出からターゲティングを図るという、【ブランデッド・インフォマーシャル】の確立。ここに踏み出す必要があるのではと、思うのです。

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