インフォマーシャルの台本を作る「3つの色」

 
三原色_1000
 

インフォマーシャルの台本を書く作業って一枚の絵を描くのに似ていると思います。
絵を描く時、まず考えるのがデッサンかなと。対象を何にするか、テーマ、構図、表現手段等を考えながらデッサンする。インフォマーシャルの台本も、数度の会議を踏まえてデッサンを整えていきます。その時大事なのが、すべてを言い表わした「長めのキャッチコピー」を創ること。この重要性については、前回書かせていただきました。これさえ出来れば、あとは“色”を付けていけばいいのです。

 

さらに「色の三原色」があるように、インフォマーシャルの台本を書く時にも基本的な三原色があると思います。商品を買ってもらうには、先ずその番組を観てもらわなければ何も始まらない。そんな意味で大切な「視聴滞留」の色。その上で、紹介する商品あるいは提案するテーマに共感して購買動機に繋げる「必要性の訴求」の色。そして最終的にプライスなどを紹介してお得感等の情報を発信する「CTA(Call To Action)」という色です。

 

「視聴滞留」の色、「必要性の訴求」の色、「CTA」の色。これらの色を基本にして組み合わせることで、その商品に合った無限の色と独自の絵が生まれると思うのです。

 

 短いコピーが連発される「メディプラスゲル」

 
mediplus
 

2年程前、とある営業担当者から見せられた29分のインフォマーシャル。「メディプラス」という会社の「メディプラスゲル」というオールインワンゲルでした。僕はその番組を見て、面白いなぁ~と思いました。

 

その構成の基本構造は、商品の効果効能を想起させるいわゆる「ビフォーアフター企画」。「熟女ダンスチーム」、「60歳のウェディングドレス」、「社長と愛用者の対談」。この3つの企画を挟みながら展開する、いたって“フツー”の構造となっています。しかしこのシンプルな構造に、ある一つの言葉が強いギミックとなって活かされています。それは、【これ1本でいいんです】という言葉。この極めて短いコピーが、ナレーション、同録、テロップを合わせて、29分の中で何と46回も連呼されている。これはもう強烈です。

 

僕がポリシーとしている「すべてを言い表した長めのキャッチコピー」が、この「メディプラスゲル」という番組には見当たらない。強いて挙げるなら、この【これ1本でいいんです】しかない。うーん……。

 

でも、この疑問は番組全体を見ることで解消されます。【これ1本でいいんです】というコピーが訴求しているのは、スキンケアの時短やコストはもちろん、シンプルスキンケアの大切さであり、メディプラス社の恒吉明美社長の想いであることが理解できるのです。また、それを表現している演出が随所に散りばめられています。

 

オープニングの後、突然音楽が消えあらわれる「この番組はノンフィクションです。肌の加工修正などは行っておりません」というテロップのみの演出。真実味を感じさせます。さらに、商品開発経緯についての恒吉社長と製造会社社長とのカットバック形式のインタビューには真剣さが表現されています。そして音楽が突然プツリと切れ、再三現れる【これ1本でいいんです】というテロップ。基本構造は “フツー”なんだけど、これらのギミックによって視聴者は飽きることなく、そしてある一つのゴールへと導かれているような気がするのです。

 

 ゴールはどこにあるのか?

 
完成
 

この「メディプラスゲル」という番組が、どんな会議を踏まえて完成したか僕は知る由もありません。想像するに、何度も何度もクライアントとディスカッションを重ねたんだろうと思います。

 

僕が唱える「構成の三原色」の「視聴滞留の色」を考える時、いろんな奇策を考えたりもしますが、ここにあるのは至ってフツーのビフォーアフター企画の結果。しかしそれ以上の役割を果たしているのが「恒吉社長の想い」なのではと思います。これをカギにして「視聴滞留の色」を付け、そして「必要性の訴求の色」と混ぜ合わせている。ここまで行けば、「CTAの色」という最終売り場まで誘導でき、ポン!と背中を後押しできる。

 

長めのキャッチコピーはここにはありません。でも、すべての構成の流れが【これ1本でいいんです】というコピーに向かって一気通貫している。番組全体を通して感じるのは『真剣さ』です。この『真剣さ』をテーマにすることが制作会議での確定事項となり、ディレクターのテクニックと恒吉社長のメッセージ性との融合で完結されているんだろうと、想像するのです。

 

 商品ロジックとエモーショナルの融合

 

しかし、一つだけ疑問。【これ1本でいいんです】というコピー。なぜ、【これ1本がいいんです】というニュアンスを入れなかったんだろう?【で】と【が】では大きな差異があると思う。しかし、最後の最後で、愛用者が語っていました。「……むしろ、1本がいいんです」と。でも、待てよ?なぜ、最後の最後にこれを入れたの?整合性はあまり考えなかった?それともこれも計算?これについては謎です。

 

悲しいかな、インフォマーシャルという番組は、一般の視聴者から「あの番組良かったね~」「感動したね~」と言われるようなものではありません。でも、この『メディプラスゲル』は僕の記憶に残る作品であることは間違いありません。【これ1本でいいんです】を核にして、その有用性を説く商品ロジックと、恒吉社長のメッセージ性を含んだエモーショナルの融合によって完成した、素晴らしい一枚の絵であると。

 

「商品ロジックとエモーショナルの融合」。次回は今回とはまた違う観点から、このことをテーマにしたとあるインフォマーシャルについて書き連ねたいと思います。

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